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ビッグイシューを予習!イギリス発祥“ビジネスとしての社会問題解決策”

2013年1月14日に開催するトークイベントの予習として、台湾ビッグイシュー編集部に夏にメール取材していた内容を公開。イギリスで創立されたビッグイシューの、基本的なシステムも紹介。その他詳しくは、1月14日、應典院での『解剖!台湾雑誌ビッグイシュー』で!

 

台北のカフェや雑貨店で、あのビッグイシューに台湾版があることを発見した。まずは表紙のデザインの面白さに驚き、手に取った。ページをめくると、アートやカルチャーに関連する記事もある。

 

THE BIG ISSUEとは、Gordon RoddickとJohn Birdによって1991年に創刊された雑誌。コンセプトは『JOURNALISM WORTH PAYING FOR = 支払う価値のあるジャーナリズム』。

 

ロンドンで増え続けるホームレスへのレスポンスとして創立。ホームレスという状況に置かれた人々がTHE BIG ISSUEを売ることによって自らを自らの手で救済することが目的だ。イギリスで始まった、ビジネスとしての社会問題解決策であるビッグイシューは、イギリスでは周知のブランドとなり、現在はそのブランドコンセプトは他国にも広がり、現地版ビッグイシューが発行されている。

http://www.bigissue.com

 

イギリス本家ビッグイシューの21周年号の表紙。

 

ビッグイシューのシステムは?

まずベンダー(販売員)として登録されると、一定部数のビッグイシュー誌が無償で提供される。その売上を元手に、ベンダーは自分でビッグイシューを仕入れる。イギリスでのビッグイシュー販売価格は£2.5。仕入れ価格は£1.25。よって、一部売れる毎に差額の£1.25がベンダーの利益となるわけだ。

 

台湾でもほぼ同じシステムで、ベンダーにまずは台湾ビッグイシューが無償で提供される。1冊の販売価格は100台湾元。無償分を売った売上を元手に、ベンダーは1冊50台湾元で台湾ビッグイシューを仕入れる。差額の50台湾元が1冊売るごとの収入となる。また、台湾ビッグイシューは、バックナンバーに限り、雑貨店やカフェで販売されている。

 

バックナンバー販売所リスト http://www.bigissue.tw/recentissues

 

基本的にビッグイシューは一般的な雑誌の流通経路を辿らず、“ベンダー=ホームレスおよび住む場所を失う状況にある人”が街頭販売することによってディストリビューターとなり、読者の手元に届く。

 

台北でのビッグイシュー


台北滞在中、やはりベンダーから最新号を直接購入したいと思い、台北の繁華街へ行ってみる。ビッグイシューベストを着ているベンダーは、こじんまりと地味に立っていることが多く、見つけるのに苦労することが多い。あるベンダーのおじいちゃんに写真を撮っていいかと聞くと、快諾してくれた。「日本人ですか?わたし、日本語ちょっとはなせます。」とにっこり笑う。

 

 

記事の多くは社会や国際情勢をフィーチャーしたものとなるが、見せ方によってこれほど美しく、心をつかまれるのか、と感心した。デザインとは、何かを伝えたいと思ったときに、より確実にターゲットに届けるためのコミュニケーション手段だ。台北の街中で、芸大生風のオシャレな若者が、販売員に「1つください」と言って購入していく光景に素直に驚いた。

2010年4月からスタートした台湾ビッグイシュー。創刊号の表紙デザインは、台湾で多数の書籍デザインを手がける王志弘(Wang Zhi Hong)。台湾の誠品書店に行ったことがある方なら必ず王志弘氏がデザインした書籍を目にしている。
http://cargocollective.com/wangzhihong/


5号目からの表紙デザインは、台湾ポップシンガーのCDジャケットデザインや写真集やアートブックのディレクション、書籍デザインを手がける聶永真(Nieh Yung-Chen※通称アーロン・ニエ)。
http://www.facebook.com/somekidding

 

台湾ビッグイシューの編集部チーフ、Sharonへの質問

 

──ビッグイシュー台湾は独自のセンスがあり、他国のものとはまったく違いますね。

 

ビッグイシューはそれぞれの地域(国)での編集チームに編集を委ねられています。ときどき他の地域の編集チームと協力して記事をつくることもありますが、私たちはまだまだインディペンデントにやっています。私たち編集チームでは、読者と良いものを共有して、読者の方々に良いインスピレーションを与えることができればと願っています。

 

──ビッグイシュー台湾とは、どんな雑誌でしょうか?

 

ビッグイシュー台湾は、20〜35歳の層をターゲットに設定し、読者の国際的視野を広げることを目的としています。アート、デザイン、建築、展覧会情報、国際情勢などが一同に載っている雑誌です。10名以上のコントリビューターが世界のいろんな地域にいるので、彼らがそれぞれの地での最新カルチャー情報なども提供してくれます。

 

──アートやカルチャー情報がビッグイシュー台湾には多い理由は?

 

実は、ビッグイシュー台湾のメインコンテンツは国際情勢なんです。読者の方々も、私たちの国際情勢に関する記事を好んでくれているようです。アートやカルチャーも私たちには重要なことですが、ビッグイシューのメインテーマではないです。おそらく、ビッグイシュー台湾はそのデザインゆえに勘違いさせてしまっているかもしれませんね。

 

──だいたい毎号何部ぐらい売れますか?

 

だいたい2万部ずつ発行しています。売上部数は少しずつ伸びていますね。

 


 

本家イギリスの『支払う価値のあるジャーナリズム』のコンセプトに対して、台湾ビッグイシューのコンセプトはスティーブ・ジョブズの名言を借りて『Stay hungry, stay foolish.』。その名言通り、本家イギリス版よりも遊び心が多く、より若い層をターゲットとした雑誌と言えるだろう。また、私はSharonに話を聞くまで、イギリス本部からの特集記事の指定などはなく、各地域の編集部は全ての編集を委ねられているということを知らなかった。台湾ビッグイシューの表紙に若手イラストレーターのドローイングが起用されたり、スターが登場する回数が圧倒的に少ないのはそれが理由だったというわけだ。1月14日のイベントでは、台北の編集部にインターネット中継。台湾の雑誌事情から彼らの編集方法、そして彼らの柔和な人柄も垣間見れればと思う。