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タイ発マスロックバンドTWO MILLION THANKS G&Vo Duiにインタビュー

タイのマスロック・ポストロックバンド、TWO MILLION THANKSが来日ツアー決定!TWO MILLION THANKSの作詞、作曲、アレンジを担当するVo&GtのDuiにメールでインタビュー。彼らの来日ライブの予習にぜひご一読を。まだ20代前半のDui。70年代のロックに魅了された彼が自身で音楽を作り演奏するようになった経緯とは?あの予測不可能な楽曲アレンジ、奇天烈なミュージックビデオについても少し解説してもらいました。TWO MILLION THANKS Japan Tour 2015全詳細については7月10日発表予定!

 

 

上写真:右から2番目がDui(G&Vo)。TWO MILLION THANKSの全楽曲制作、アレンジを手がける。


自分は何もいいところ持ってないから、何か特別なスキルを身につけないと、って思いました

 

──学生時代はどんな音楽を聴いていましたか?

 

Dui: 70年代の音楽を掘っていましたね。主にギターヒーローと呼ばれるミュージシャン達の音源を。僕は、いろんなジャンルの音楽を聴く友人たちに囲まれていました。特に仲の良かった友達、4~5人ぐらいはそれぞれ違ったジャンルの音楽を聴いていました。タイインディー音楽を聴く友達、ハードロック、ブリットポップ、メタル、といた具合に。僕は、ハードロックを主に漁るようになりました。ギターを弾きたいと思うようになった最初の音楽は、Stairway to HeavenにLed Zeppelin、Guns N’ Rosesもそうだし、あとはOzzy Osbourne、Black Sabbathに、まさにあの時代のバンドですね。そう、SkidrowにEddie Van Halen。うん。あのあたりの全ての音楽に影響されました。
その後、少し実験的な構造をもつ音楽に興味が移っていったんです。Bucketheadとか、Queenとか、これらのバンドはディレイやモジュレーションを多用しています。こういう音楽を聴き始めた頃から、高校時代にIncubusを知る頃まで、僕はエクスペリメンタルロックと呼ばれるようなタイプの音楽に傾倒します。こういう音楽は、とてもうるさくて、かつ、細かすぎると思っていました。でも、たくさん聴いていくと、彼らの音楽ってたくさんのアイディアと面白いアレンジが詰め込まれていることに気づいたんです。それから、僕は複雑なアレンジ構造を持っていながらも、ドリーミーな楽曲を演奏するバンドを探してたんです。そこでついに、SO::ON Dry Flowerというレーベルを見つけて、GooseやDesktop Errorというようなバンドと出会います。Mogwaiや、Explosions in the Sky、Caspianなどの海外のポストロックバンドを知ったのも同じ頃です。タイのバンドで、TRYMYSHOESというバンドがいて、マスロックというスタイルは彼らのおかげで知りました。そしてマスロックと呼ばれる音楽も聴くようになり、toe、LITE、Euphoria、mouse on the keysなども聴くようになりました。そのあと、最近では、もっとインディーのなかでもアンダーグラウンドな音楽シーンに注目しているんですが、バンド名は覚えていないですね。James Blake、The Black Keys、Alt-J、Tame Impala、あと他、Tobaccoのようなインディーバンドも聴いています。

 

──音楽を自分で演奏するようになったのはいつ、どのようなきっかけですか?

 

Dui: いつからだろう……、かなり昔、子供の頃だったと思います。いつもギターを触っていましたが、本気で弾くようになったのは、17歳ぐらいでしょうか。うん、Led Zeppelinの影響ですね。その前までは、歌本に載っているような音楽をただ楽しいから弾いていただけで。たぶん、自分で演奏したいと思うようになったのは、いつも他人より自分が劣ってるような気がしていて……。自分は何もいいところ持ってないから、何か特別なスキルを身につけないと、って思いました。音楽を聴くことが好きだから、じゃあ音楽の技術を身につけよう、って。自分はひょっとしたら上手くなるんじゃ?って思ったし、振り返ってみれば、そのときに思ったことが自分を音楽に向かわせたと思います。

 

──TWO MILLION THANKSを結成したのはいつ?

 

Dui: 大学1年生のときだったので、5年前、2010年頃ですね。

 

 

──TWO MILLION THANKS(以下、TMT)の他にも、「Youth Brush」というソロプロジェクトをやっていますよね。YOUTH BRUSHとTMT、どちらを先に始めたのですか?あと、「Youth Brush」についても少し教えてください。

 

Dui: TWO MILLION THANKSも、Youth Brushも、実は同じ時期に始めたんです。Youth Brushの曲は、先にYouTubeで公開したので、TMTよりもYouth Brushのほうが先に始まっていると思っている人もいるかもしれません。Youth Brushは、自分のソロとして自分の気持ちを忠実に表すことにしていますね。なんというか、自分の個人的な日記のような。日々起こったことを、そのまま記録していくような感じです。自分の友達、自分自身、または大好きな誰かに、曲を書くようなイメージです。なので、プライベートなプロジェクトと言えると思いますし、YouTubeにどんどん曲をアップしていくので、例えばiPodやmp3プレイヤーがなかったとしても聴いてもらうことができます。自分でも驚いたんですが、たくさんの人が聴いてくれて、フォローしてくれるようになりました。だから継続的に曲を作って、アップロードしていかないとと思っています。

 

 

利己的であるからこそ、個性的な曲がうまれると思います

 

──今のタイの同世代のミュージシャンやバンドで、好きなバンドはいますか?いたら、教えてください。また、なぜ彼らを注目していますか?

 

Dui: TMTとして「音楽をつくりたい」と思ったきっかけになった好きなバンドはTRYMYSHOESですね。実際はもっと他にもいますが、TRYMYSHOESの曲を聴いたことが最初のきっかけです。それでも彼らは僕たちの“楽曲制作における考えのプロセス”に影響を与えた訳ではないかもしれません。Modern DogやDesktop Errorも好きなバンドですが、僕らの曲を作る上でアイディアをもらったという訳ではありません。彼らはちょっと違うというか、どちらかと言うと、僕らは海外のバンドから楽曲の構成などのアイディアをもらっていると思います。タイの人たちは、とても有名な音楽、例えばRSiam(タイのメジャー音楽会社)から出ている音楽みんな影響を受けていて、でも僕はどうしてこれほどタイの人たちに人気があるんだろう?と思います。

 

──TMTの楽曲はとても個性的。変拍子もそうですが、予測できないメロディや展開に驚きました。こういった楽曲は、何から影響を受けて出来たものなのでしょうか?

 

Dui: 僕の性格や人格が、自分の音楽に表れていると思います。二重人格と言うか、いや、自分の内面はいくつもあると思っていて。というのも、僕は人ごみの中で育ってきたし、家にも家族がたくさんいるし、たくさんの友達と過ごすし。そして、みんなそれぞれが、いろんな音楽の好みを持っていて。僕はいろんなスタイルの音楽が大好きだし、だからこそ僕はいろんなタイプの自分を持っていて、だから僕はある一定のジャンルに縛られた音楽をやりたいと思わなくなったのかもしれない。うん。そういうことですね。
自分の個人的な過去の生活や経験は、僕の作曲やアレンジを形づくる大きな要素になっています。実際、みんな自分のなかに、自分とは違うキャラクターを持っていると思うんです。例えば、Youth Brushは静かで柔らかくて情感的な音楽をやっていますが、TMTはロックでありいろんなものが混じっている。なんて言うんだろう。本来は、音楽をつくるということは、本人のキャラクターから出てくるものであるべきで、自分の独自の考えを確立する方法でもある。とても利己的です。利己的であるからこそ、個性的な曲がうまれると思います。

 

──ミュージックビデオも非常に面白い。『1.9 dimension』、『do』などのミュージックビデオのアイディアはどこから生まれたのでしょうか?

 

 

Dui: 『do』のミュージックビデオにはたくさんの奇妙なシーンや物体が登場します。ビデオの監督は、歌詞の世界を映像に登場させる代わりに、音自体を映像に反映させたんだと思います。このミュージックビデオは、歌の歌詞には関係ないたくさんのモノが登場することで、見た人はその不思議さに引きつけられてしまいます。それが、「do=タイ語で“見る”の意味」、つまりは「見る」という行為となる。
『1.9 dimension』に関してですが、僕たちはMVを作ってもらうときは、監督に普段のコマーシャルな仕事とは違う、自分がやりたい表現をやってもらうようにしています。なので、普段の仕事では発揮できない自由な発想やクリエイティビティを思う存分出してもらっています。そして、このシュールなビデオが出来上がったんです。この監督は、歌詞の世界を映像に反映させました。1.9次元は、だいたい2次元に近いんだけど、ちょっと違う世界。監督はサード・ジェンダー(※)を登場させることで、1.9次元の世界を表しました。男性でもあるし女性でもある。観る人に判断が委ねられます。そしてバンドメンバーも登場させることによって、変な構造の世界観を表現してもらいました。

 

 

参考記事:タイの新憲法、「第3の性」認める方向

http://www.cnn.co.jp/world/35059144.html

 

──これからのアルバムの制作やライブの予定を教えてください。また、日本でのライブ、何に期待していますか?

 

Dui: できるだけ早く音源制作をしたいと思っています。今、もう1人新しいメンバーを探していて、メンバーが増えると楽曲のアレンジや構成がもっと面白くなりそうです。フルアルバムが完成したら、前作のEPとはまったく違った音になりそうです。もう、完全に別物になると思うんですが、でも曲を聴いて楽しいと思ってもらえたりバラエティに富んだ楽曲になることは確かです。以前よりシンプルな曲になるかもしれません。でも、もっと細やかな曲。
日本でのライブに期待すること?オーディエンスの数には期待しませんが、まずは自分がめちゃくちゃ良いライブが出来ればと思っています。

 

Thai-English Translation: Voratorn Peerapongpan

 


 

TWO MILLION THANKS Japan Tour 2015

8月21日(金) “TONE FLAKES Vol.85” (心斎橋Pangea)
8月22日(土) ONE Music Camp(兵庫県三田市)
8月23日(日) 磐田 FM Stage
8月24日(月) 新代田FEVER