台北には、良質なダンスミュージックを聴けるパーティーやクラブがあるのだろうか?現地でフライヤーを収集しても、インターネットを駆使しても、音の質にこだわったパーティーにはなかなか出会えなかった。長い時間を経て、たまたまfacebookで見つけたSmoke Machine。彼らの配信するポッドキャストから、彼らの音に対する真摯な姿勢が伝わってきて、どうしても彼らと連絡を取りたくなった。台北滞在中にSmoke Machineのメンバーのうちの1人と会い、彼らが主宰するパーティー『Organik』や台北のクラブ環境について聞いてみた。
2月3日、16回目のOrganikの模様。日本からDJ NOBUがプレイ。
OrganikレギュラーDJでSmoke Machineのメンバー、disconnected によるmix。
Organic Facebook page http://www.facebook.com/OrganikOfficial
──Organikはどこで開催してるの?
今までいろんな場所で試してたんだけど、今はThe WALLに落ち着いてる。昔はPIPEとかでもやってたね。The WALLはキャパ500人ぐらいなのに対して、PIPEは小さめのハコで200~300人ぐらいのキャパ。実はTaipei Contemporary Art Centerでもパーティーをやったことがあって、これはなかなか面白かった。これがその時のビデオ。TCAC行ったことある人なら、この光景信じられないと思うよ。
──わー!これがTCAC?! すごい!この辺って人住んでるでしょ?問題ないの?
参考記事: アートを通じて人々がコミュニケーションできる場所ーTaipei Contemporary Art Centerの取り組み
https://offshore-mcc.net/interview/130/
警察も来たし役所の人間もきたよ(笑)。
──じゃあパーティー止まっちゃった?
ほとんど終わりぐらいのところで中止したね。夕方5時から24時までの予定だったんだけど22時でクローズすることになった。僕らの出すベースラインはパワフルだからね。
──お客さんはだいたい何人ぐらい集まってる?
平均して300人ぐらいかな。たまに400人のときがあったり、たまに250人ぐらい。チケットはそんなに高くないからね。一番安いときで350台湾元、1000円ぐらい。
──その価格って台湾の若者にとっては安いの?
そうだね、安いと思うよ。でも最近僕らは日本と同じぐらいの価格設定にしようと考えてる。The WALLで最近のパーティーは3000円ぐらい。
──それぐらいの価格にしても300人ぐらい集まってるんだ?
そうだね。
──お客さんの年齢はどれぐらい?
チケットの値段で変わるね。安ければ若い層になるし、少し高めだと年齢も少し上になる。最近のThe WALLでのパーティーではだいたい30~35歳ぐらいが多いかな。でもたまに学生も来るよ。
──Organikは今まで何回やったの?
15回やってる。次で16回目だね。2ヶ月で1回のペースでやってて、次は2月3日。今回は日本からDJ NOBUと、イタリアからNessを呼ぶんだ。最近僕たちはDJ NOBUと良い関係を築いてて、何度か台湾に来てもらってるよ。
──海外からゲストを呼ぶって交通費もかかるし大変だよね。ペイできそう?
うん、たぶん大丈夫かな。ツアーとして東京や大阪のオーガナイザーと交通費はシェアするんだ。そういえば一度、Organikは市が管理する台北101の隣にある倉庫で開催したこともあるよ。
──行政が管理してるということは、安く借りれる?
うん、すごく安かった。たった15,000円ぐらいだよ。
──安い!じゃあThe WALLはもっと高いわけだし、絶対15,000円の行政が管理するハコ使った方がいいじゃない!
いや、ここじゃダメなんだよ。このハコでは禁煙だし、アルコールも売れない。
──なるほどね!日本でも公共施設になるとだいたい一緒だね。むしろその点は世界共通だろうね。それにしてもこの動画見てると、こんなに台北にもテクノが好きな人たちがいたんだと。全然知らなかった。オーディエンスはどうやってOrganikの情報を見つけてるの?
Facebookかな。あと友達同士の口コミとか。
──オーディエンスは普段からテクノを聴いている人が多い?
半々かな。僕が思うに、今台北のテクノフォロワーたちはテクノってどういう音楽なのかを知ろうとしてる。僕らはSmoke MachineとOrganikで新しいクールなものを探しているし、ヨーロッパあたりのミニマルテクノなどを探求しようとしてる。ラグジュアリーなテクノとかじゃなくてね。
僕らが聴きたい音を聴くために始めた。それだけだよ。
──台北には他に同じようなジャンル、ミニマルテクノやディープテクノを扱ったパーティーはある?
ないね。
──どうしてパーティーを始めようと思ったの?
誰もやらないから。テクノのパーティーはあっても、誰もこういうアンダーグラウンドなテクノはやらない。僕らが聴きたい音を聴くために始めた。それだけだよ。
──ポッドキャストはどうしてやろうと思ったの?
これもひたすら斬新な音楽を台湾のオーディエンスに紹介したいだけだね。ポッドキャストではいろんなアーティストにトラックを提供してもらってて、日本からはDJ IORIやDJ SOも参加してくれてる。Lim Giongは台湾でも有名なサウンドデザイナー。彼は映画の音楽制作などもやってるんだよ。Organikではテクノを扱っているけど、ポッドキャストSmoke Machineではビートのないエクスペリメンタルな楽曲も配信してるよ。
──コンピレーションCDを発売しようという計画はある?
ないね。どうしてかと言うと、みんな買わないから。無料でダウンロードする方法をみんな知ってるし。
──ということはポッドキャストのほうが情報の広がりもあるしベターだと。
そうだね。
──日本ではちょっと状況が違うかも。私もそうだけど、まだCDを買うことが一般的なんだよね。
台湾も一緒だよ。ポップとかロックではみんな買う。トランスとかハウスでもみんな買うんだけど、クラブミュージックでもアンダーグラウンドなものに関しては買われない傾向にあるね。
──そうなんだ。日本ではアンダーグラウンドな人こそアンダーグラウンドなCDを買ってる印象かな。
台湾ではアンダーグラウンドマーケットはかなり小さいからね。そういうものを取り扱ってる店舗やレーベルがごくわずかしかない。
──そうだね。台北にはほんと数軒しかアンダーグラウンドなショップはないよね。それを思えば日本にはディスクユニオン渋谷、下北沢、新宿…、と何店舗もある。そういうアンダーグラウンドなショップが多いっていうのは確かに日本でまだCDが買われる要因のひとつかもしれない。
じゃあ、今後の目標や夢はある?
そんな大それたものじゃないよ。ただ、僕たちがOrganikやSmoke Machineを始めるまで、台北にはこんなミニマルテクノやエレクトロを聴ける場所がなかった。そして今も僕たちしかこんな音楽を提供していない。ひたすら自分たちが追い求める音楽をオーディエンスにプレゼンしていくだけだよ。
アンダーグラウンドなシーンを支える20代半ばの若いオーガナイザー。自信を持って堂々と話す彼は、実は日本に住んだこともあり日本語も堪能。そして彼も台湾と海外のボーダーをまったく意識せず、自ら海外とのネットワークを作り出し、ローカルに貢献しようとしている。本日現在開催中のOrganikには参加できなかったが、隔月1回行なわれるこのパーティーに近い将来参加したい。